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連載⑫



第十二回 「キャスティング」 その①


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のぼう様こと成田長親を野村萬斎さんにお願いしたのは

前述の通り、

ごく初期の05年の段階でした。

というか、萬斎さん以外は、

全く候補が出ていなかったと記憶しています。

のぼう様はこれといった能力が無いにも拘らず、

回りの人間たち全てを魅了してしまう人物です。

そんな無茶な、というかいわば「無理目な」人物には

何か特別の、雰囲気、空気感が必要です。

小説にはのぼうの外見に関する表記がありますが、当然我々は

それ以前の脚本をもとにキャスティングをしています。

その際に最も重視したのも、俳優自らが醸し出す空気感でした。

萬斎さんそれはまさしく特別です。

まるで常に宙に5cm浮いているような不思議な佇まいは、

萬斎さんをいつの時代の人物なのかわからなくさせます。

萬斎さんの回りだけはいつも無風状態なのではないか、

そんな気さえしてきます。

そういった独自の存在感がのぼうには絶対に必要だと考えたわけです。

この映画のクライマックスとも言える人工湖での船上の田楽踊り

そこでの萬斎さんの踊りは見事というしかありません。

と言うか、萬斎さんでなくては

あのシーンは撮影出来なかったかもしれません。

萬斎さんは実際に浮かべた船の上で田楽踊りを行っています。

揺れ続ける船の上でです。

しかし、実はキャスティングする際、

萬斎さんが踊れるということを

少なくとも僕は全く考慮に入れていませんでした。

つまりそのくらい萬斎さんの存在そのものが、

のぼう様だと考えていたのです。

同じことが、のぼうの親友、

正木丹波役の佐藤浩市さんにもありました。

丹波はまるで自分の足のごとく

自由に馬を乗りこなせなくてはなりません。

これまた実際に撮影をして痛感したのですが、

浩市さんは本当に馬の扱いがうまい

かつての西部劇俳優のように当たり前に馬を操る。

しかし、キャスティングの際には浩市さんが

馬に乗れるという点は僕らの意識にはあまりありませんでした。

それよりも、丹波の持つ哀しみ

それは時代が変わって行くことへの哀しみなのかもしれませんし、

天才を友に持ってしまった哀しみなのかもしれませんが、

それを表現できるのは

浩市さんだけだろうという思いがまずありました。

きちんと年齢を重ねてきた人間にしか出せない

重層的なキャラクターが丹波には必要だったのです。


(つづく)


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